2006年08月08日

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(八)

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(八)


◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(八)

◆◇◆「お盆」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」、日本人の固有の宗教観や霊魂観

 お盆行事(祭り)には、三つの要素があるといわれている。それは、祖霊の祭り(死者祭祀)、豊穣の祭り(穀霊祭祀)、魂の祭り(生命の更新)である。この三つの要素が繋がりあるものとして受け取られてきたのが、日本人の古くからお盆行事(祭り)に対する考え方だったとされている(※注1)。

 そして、「盆と正月が、一緒に来る」と言う言葉がある様に、年の始まりには、二つあり、一つは稲作を中心としたもので、正月を年の初めとするものだ。歳神を迎えて米などの穀物を捧げ、新年の豊穣を祈る。

 もう一つは、蕎麦や芋などの畑作を中心としたもので、旧暦七月のお盆の時期が、二つ目の年の初めとも考えられてきたといわれている。このことから、昔は、一年を二つに分けて考えていたようなのである(※注2)。

 今でも、お盆には、喬麦や芋を供物として捧げる民俗が伝承されており、「お盆」を芋正月いう地方もある。この二つの豊穣を祈る祭りと、祖霊を迎え祀る祭りが、複合されたと考えられている。豊穣をもたらす神は、すなわち祖霊でもあったのだ。これらは、なぜ一体のものとして考えられたのであろうか。

 先祖の霊は神となって、子孫のために作物が豊かに稔ることを見守ってくれる。そのことから、作物が取れたら、それを供物として祖霊神に捧げ、共に喜びを分かち合って、これを共食し、新しい年の豊穣を祈るのである。豊穣を祈る祭りは、そのまま祖霊を祀ることになるというのが、一番分かりやすい解釈だ。

 食物が新たに稔るのを祈ることと、神や祖霊を迎え、共に過ごすことを、一つのことのように過ごしてきた昔の人々の姿が、年中の祭礼の中に生きてきたのである。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1)農耕民族である我が国において、正月と盆の行事は、年中行事の中で最も重要なものである。正月は歳神(トシガミ)の来臨を願いこれを祀り、一年の農耕生活の安泰を祈ろうとすることと、一年の行事を儀礼化して演出し、類感呪術・模倣呪術によって豫期の収穫を得ようとする行事や、年穀や天候の吉凶を占う行事を中心にして、種々の呪術宗教的な要素を以て構成されている。歳神のトシは時間の区切りとしての「年」であるとともに年穀の稔(トシ)でもあり、したがってこの神は穀物霊、ことに稲霊から発達した農耕神と考えられている。

 すなわち、秋の収穫が終わって次の蒔種期に至る中間、そして太陽が南行の極みに達して北行に変わろうとする境目において、穀霊の活力の復活を祈り、豊かな稔りを期待する呪術的・祈祷的な儀礼行事として始まったものと考えられる。しかし他面、この神をミタマサマといい、供飯をミタマノメシと呼び、さらには「佛の年越」「先祖正月」として家の先祖の霊を迎え祀るところの多いのを見ると、この神は先祖霊としての性格も持っており、七月の盆行事に対する祖霊祭祀としての色彩も濃いようだ。

(※注2)お盆は、七月十五日(旧暦)を中心に営まれるが、太陽暦採用後は、八月十五日を中心にする地域が多く、元来は七月の行事であったのである。お正月の行事は、大晦日から元旦を中心に営まれるものと、十四日夜から十五日にかけてを中心にするものと、二つに分けることができる。前者は、一般に大正月、後者は小正月と呼ばれていた。お盆は、期日の上では小正月と対応している。即ち、ともに十五日を中心にし、元旦と釜蓋朔日、七日正月と七夕、御斎日(一月十六日と七月十六日)、二十日正月と裏盆というよう対応している。

 このことから、日本の年中行事は、かつては一年を単位とするのではなく、一年の前半の行事を後半の七月から十二月までもう一度繰り返す構成を取っていたのではないかと考えられている。また、六月と十二月の晦日(みそか)には、天下万民の罪や穢れを祓う大祓が恒例となっている。旧暦の六月の晦日には、夏越の祓というのもあるのだが、半年をはさんで類似の行事が多いのは、古くは、夏至と冬至で一年を二分する考え方(陰陽でいえば隠遁と陽遁)が強かったからだと思われる。


同じカテゴリー(スサノヲの日本学)の記事画像
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(四)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(三)
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(二)
◆正月の起源と生命の循環と再生のシステム
◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(一)
春、桜の語源と稲作信仰、花の日と花祭り
同じカテゴリー(スサノヲの日本学)の記事
 ◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(四) (2012-01-04 17:08)
 ◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(三) (2012-01-03 14:36)
 ◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(二) (2012-01-03 14:30)
 ◆正月の起源と生命の循環と再生のシステム (2012-01-03 14:15)
 ◆正月祭りのフォークロア、日本の基層(一) (2012-01-01 13:32)
 春、桜の語源と稲作信仰、花の日と花祭り (2011-03-25 10:10)

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 09:58│Comments(0)スサノヲの日本学
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。